ヌーノ・別天地構想

君が泣くまで考えるのをやめない。つもり

MENU

スポンサーリンク

音楽における上手さはリズム感だけではない

僕の大学のサークルの後輩だった人で、

今では、結構有名になったバンドのギターの人がいます。

その人がいつだかの飲み会で、

「演奏で一番重要な要素はリズム感だよ」と語っていました。

 

確かに、まあ一般的な演奏での「上手さ」ではそうだと思うんですよ。

クラシックとかポップスとかそういったジャンルでは、「曲」の演奏に対して、

リズム感、テンポ、ピッチ等、が正確な方が喜ばれると思います。

あと、テレビの生放送の演奏とかは正確な方が良いですよね。

 

でも、なんか一番重要な要素がリズム感っていうのが、腑に落ちなくて。

君がやってるのは「軽音楽」でしょ?って思うわけ。

軽音楽として、バンドを組んで演奏をしている以上、

単に、「曲」の演奏だけには収まらない何かがあるはず。

 

例えば、完璧に演奏できてるけど、ずっと下を向いて演奏している人たちと、

ミスしている部分も多いけど、前を向いて笑顔で演奏している人たちがいるとします。

みなさんは、どちらの方が好きですか?

僕は前を向いて笑顔で演奏している人たちの方が断然好きです。

 

自分の価値観を押し付けるわけではないんですが、

音楽には「曲」以外の要素として、

バンドのアイデンティティや雰囲気、演奏の勢いや熱意、演奏者の人柄など、

言葉では表現しにくい人間味の部分があると思うんです。

 

その人間的要素によって、「曲」の演奏の味付けが変わって、

聴く人見る人の感じ方も千差万別になってくる。

僕は良い音楽、つまり感動を呼ぶ音楽に求められているものは、

演奏技術の高さや正確性といった要素だけではなく、

そういった人間的な要素が重要であると考えています。

 

そこで同じ曲でも、演奏者によって全然違った見え方がする例として、

MetallicaMaster of Puppets という曲と、

DREAM THEATERによるそのcoverを挙げたいと思います 。

 

 まずはCD音源のMaster of Puppetsから。

Metallica - Master of Puppet(CD音源)

Metallica - Master of Puppet(Live)

 

こちらが本家のライブ映像です。

聴いてもらうとわかるんですけど、かなり早く演奏していて、

原曲に比べてライブは1.3倍くらい早い(笑)。

ドラマーがラーズという人物で、テンポキープをせず、

ライブではどんどん加速していって、暴走していく。

テンポが早すぎて、ギターの刻みが追いつかず、

ズレている部分がかなり多く無理やり弾いている。

ギターソロの部分も見ていて、弾けるのかどうかこっちが不安になるし、

音も実際、外している部分も多い。

でもこの映像の圧力と勢いが凄さまじいでしょ。最高でしょ。

 

いかに、演奏が下手でもこのバンドは世界中で愛されている。

走るドラマーも完璧に弾けないギターも、

このバンドのアイデンティティになっていて、絶対に彼らでなければいけない。

彼らはこうでなければならない。

言うなれば、下手だけど「巧い」

このバンドのメンバーが彼らであることに、絶対的な価値があるんです。

 

 

 対するはDREAM THEATER。

DREAM THEATER- Master of Puppets (Live cover)

DREAM THEATERってバンド、僕が大好きなバンドでして、

そのバンドがMetallica のMaster of Puppets をコピーした映像です。

簡単にDREAM THEATERというバンドを紹介しますと、

バークリー音楽院に通っていた、超絶技巧を持つプレーヤー達による、

プログレッシブメタルバンドです。

 

 聴いてみて思うのが、これなんか違う(笑)

Metallicaとは全然、演奏での魅せ方が違っています。

もうこれは完璧です。原曲に正確すぎて面白い

全くと言っていいほど、ズレていません。

この演奏は粒がそろっていて、ギターソロも涙が出るほど流麗で美しい。

しかし、僕はこの演奏に対して、いくらかのコレジャナイ感を抱くわけです。

(DREAM THEATERというバンドを否定している訳ではありません。)

Master of Puppets としては粗さが足りないかなと思ってしまいます。

 

実際、この動画のニコニコ動画版ではコメントやタグに、

「きれいなメタリカ」「机上のメタリカ」「ミスをしないというミス」

「粗さが足りない」「打ち込みみたい」「HNKで流せる」「正確すぎて違和感」

などと書かれています。

 

やはり、本家の演奏を知っているだけに、

本家のような荒々しさや疾走感がないと、物足りなく感じてしまいますね。

要するに、上手いけど「巧くない」

バンドにはそれぞれのアイデンティティがあるということです。

 

(ちなみにこの映像は、どちらのバンドも好きな僕にとっては最高に楽しめる映像となっています。おそらくメタリカを尊敬しているからこそ、完璧にカバーしているのだと思います。)

 

現代の音楽シーン

世界は広いので、単純に楽器の演奏が上手くて、

テクニックを持っているという人は本当に数多くいると思います。

でも、そういう人が売れているかどうか、

良い音楽として評価されているかっていうのは別の話です。

音楽の良さとか感動は、技術的な面だけでは測れない。

 

日本で今売れている邦ロックバンドは、

①バンドとしてのアイデンティティや独自性を確立している

②楽曲に多くの人が共感できるもの表現されている

③楽曲が音として楽しめるものである

この3パターンに分類できる気がします。

 

売れているから、良いバンドっていう訳でもないですが、

やはり、単純にテクニックや演奏力があるバンドが売れている訳でもないと思います。

 

ただ、「③の楽曲が音として楽しめるものである」というのが厄介で、

商業的で売れれさえすればよく、金さえ稼げればいいといった、

「軽量化」された音楽の付け入る隙になっているのではないかと考えます。

 

特に、今の邦ロックバンドはフェスで受けがよくて、盛り上がる曲がなければ、

若い人にも受け入れられないという傾向が強い。

そのため、四つ打ちで縦ノリ的な曲が目立つバンドが、

多くなってきてしまうのかなと思います。

個人的にはもっと、多様な音楽にいろんな人が触れることができるような、

音楽シーンになってくれることを願っています。

 

余計なことを書きましたが、

本当に、人それぞれ自分の好きなアーティストを、

自分の好きな視点から愛せばいいと思います。

それは演奏の正確性だったり、楽曲の好みだったり、

メンバーの人柄だったり、なんでもいいです。

 

以上、音楽の楽しみ方はさまざまな視点にあるという話でした。